君の時間すべて




「ベルナールさん。」

鈴のような声が聞こえてくる。

「ベルナールさん、朝ですよ。お仕事、遅刻しちゃいますよ。」

そっと、気遣うように揺らされる肩に自然と目が開く。
目覚めてすぐに見たものは―――咲きたての花のような愛する人の微笑み。
朦朧としていた意識もすぐに覚醒する。

「おはようございます、ベルナールさん。」
「おはよう、アンジェ。今日もチャーミングだね。」

まだ慣れないのかほんのりと頬を染めてはにかむその姿が可愛くて、ついつ
い抱き寄せてしまう。
腕の中から聞こえてくる小さな驚きの声すら愛しくて。
こんな日常の些細な幸せに感謝せずにはいられない。

一緒に暮らし始めてもう半年。
ウォードンの郊外にある陽当たりのいい、こじんまりとしたアパートの一室。
彼女のいた陽だまり邸に比べたらずっと狭いけど、遠くにウォードンの象徴で
ある双塔がよく見える眺めは良好だ。

君の好きな花を一緒に育てて、部屋に飾ろう―――
僕の大好きなコーヒーと君の好きなカフェオレを飲みながら、これまでの10年
分の君の話を聞かせて―――
これから先、とりあえず10年分の君と僕の未来予想図を計画しなくちゃ―――

引越し当日、アンジェもこの部屋がとても気に入ったらしくて荷解きをしながら、
これからの事を二人してあれこれ興奮気味に話していたのは今でもよく覚えて
いる。そして今、あの時話したことの一つ一つを日々積み重ねてきた。
それを思うだけでベルナールの心は満ち足りてくるのだ。

「アンジェ、君と一緒に暮らせて僕は本当に幸せだよ。」
「私もベルナールさんと一緒にいられて幸せです。」

背中を抱きしめていた腕を解き、もぞもぞとベルナールの腕の中からアンジェ
は顔を上げると、瞳を輝かせて笑った。

「それとベルナールさん、お誕生日おめでとうございます。」
「えっ?」

目を軽く見開いて、瞬きを数回。
そんなベルナールの様子にアンジェはクスクスと笑い声をもらし、表情を嬉し
そうに綻ばせた。

「やっぱり忘れてたんですね。でも、私が一番最初にお祝い出来たこと間違い
 なしだから嬉しいです。今日はご馳走いっぱい作りますからたくさんお祝いし
 ましょうね。」

そして頬に軽く、羽根のような触れるだけのキスが贈られる。
赤くなった頬をそのままに幸せそうに微笑まれて、ベルナールも込み上げてく
る温かな想いに満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう、アンジェ。こんなに嬉しい誕生日は生まれて初めてだよ。」
「喜んでもらえてよかった…。あの、ベルナールさん。一つだけ我侭なお願い
 があるんですけど聞いてもらえますか?」
「なんだい?」

上目遣いにそっと窺う表情が子供の頃の仕草とちっとも変わらなくて、昔の面
影を思い出させる。
アンジェのお願いは大概、控えめで我侭ともいえないものだ。どんな可愛い願
い事が出てくるのかと向けられる表情にベルナールは楽しみで仕方なかった。

「来年も、再来年も…。この先ずっと、ベルナールさんのお誕生日は一番最初
 に私にお祝いさせてくださいね。」

それはつまり、僕が死ぬまでずっとそばにいてくれるということで。
今日みたいに朝、目が覚めて一番最初に会えるという約束だ。それはこちら
こそ願ったり叶ったりで、アンジェもそれを望んでいてくれる。喜びのあまり、
はしゃぐ子供みたいに彼女を力いっぱい抱きしめてしまう。

「アンジェ、それは我侭じゃないよ。むしろ僕からお願いしたいぐらいだ。大好
 きなアンジェ、これからもずっと僕のそばにいてくれるかい?」
「はい!!」



最愛の人と共に過ごす時間一生分。
この日、ベルナールは人生最高のプレゼントを貰ってしまった。







ウチのサイト初の、ネオアン創作でございます〜!
ベルナール兄さん誕生日記念のフリーSSを見つけて、ちゃっかり頂いちゃいましたvv

いや朝からトロトロに甘いですね〜 ラブラブです
兄さんって仕事の不規則さに目をつぶれば、いいだんな様っぽいですよね
優しいわ甘いわ声がいいわ(声はあまり関係ないが)
まったくどうしてくれようこんちくしょー!!(どうもせんでいい)

流 瑠河さん、ごちそうさまでした ありがとうございました


流 瑠河さんのステキサイトはこちら




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